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機動戦士Zガンダム

グリプス戦役

レビュー

初代放映の後に巻き起こったガンプラブームから数年。MSVが握っていたバトンを受け継いで登場した、新しいガンダムである。主人公は初代の敵キャラクターのシャア、そして今回の準主人公は前作以上に激しい気性を持つ少年。しかしその設定やストーリーは暗く、後半となっては仲間が死なない回は無いくらいであった。ちなみに本作品は巨大ロボットや軍事面でのウンチク、人間ドラマやストーリーなどは完全に切り捨てているといっても過言ではなく(戦闘の駆け引きなどはほとんどなく、巨大ロボットアニメそのままの子供向けバトルに摩り替えられていた)、劇中で主に語られるのは政治・経済である。よって連邦の分裂やMS企業の台頭など、正直一度観ただけでは理解し辛い部分もあり、故に批判も多いこの作品ではあるが、『センチネル』の作者・高橋氏は同誌の巻末で「受け手がついてこれなかった」だけであるとコメントしていた。まあ私としては「文学作品ならそれでもいいけどなぁ」などと在り来たりな意見しか言えないのもまた哀しいことだケドモ。

エゥーゴ

アナハイム社と結託したブレックス准将率いる、反ティターンズ派の連邦軍将校の集まり。協力組織にカラバがある。0085、30バンチ事件をキッカケに活動も活発化、グリプス強襲を発端に全面戦争へと突入する。ジオンのシャアや元ホワイトベースのクルーなどの著名人も数多く擁し、メイルシュトローム作戦をしてティターンズを壊滅せしめた。

ティターンズ

0083、タカ派のジャミトフ准将の設立した地球出身の極右的戦闘集団。ジオンの残党狩りをその目的としているものの、指揮官バスクの暴走もあってその対象は全スペースノイドへと向けられた。後に30バンチ事件をキッカケに増長。グリプス襲撃をして、エゥーゴとの全面戦争に突入する。しかしアクシズの帰還やシロッコの反乱により壊滅。以降、連邦内からの反乱は彼らの名で喩えられることに。

カミーユ・ビダン

エース・ベテラン Zガンダムのパイロット。グリーンオアシスの一市民に過ぎなかったが、ティターンズにからかわれてそれに反抗、殴ったことからエゥーゴに参加する。初めはファの影響もあってどうも女々しい印象を受けたが、エゥーゴ入隊後は仲間の死やフォウとの出会いと別れ(両親の死ですら彼を変えられなかったのに)、そして大人との考えの行き違いに苦心しながらも成長。幾多の戦渦を潜り抜け、誠の男となった。ちなみに彼は自分の名前に強いコンプレックスを抱いており、幼い頃はそれを乗り越えるためにカラテやプチモビの訓練をしたこともあったという。しかしこれは言葉のマジックで、富野監督曰く実はカミーユというのは別に女の名前でも何でもないらしい(同名の芸術家もいれば革命家もいる)。何かとグジグジした彼だったが、ストーリーも後半へ向かうとファや周りの大人たちとも折り合いを付け、遂にはカミーユ自身が悪の根源と睨んだ――脇から見ているだけで人を弄ぶ外道――シロッコと剣を交えるまでに到る。死闘の末に勝利した彼だったが、シロッコの怨念を含んだ心理攻撃を受け、耐え切れなくなった彼は精神崩壊。星を見ることに……。その後は地球の病院で治療を受け、ハマーン戦争の終結と同時に快方に向かい、戦後は月で病院を営んでいるというが事定かならず。
「俺は男だよ!!」

ファ・ユイリィ軍曹

一般兵・パイロット 姉さん気取りでカミーユをいちいち注意をする、近所の幼なじみにして同級生。一時彼女の家族は「カミーユと知り合いだから」という無茶苦茶な理由からティターンズに拘束されるも、彼女だけはテンプテーションで脱出。アーガマに着いたのちはカミーユに影響されてパイロットを志願、グラナダにて訓練を受けるが、もしバレでもしようものならバスクに囚われた両親がどうなるか想像していなかったワケではあるまい。その後はシンタとクムのお守り役として艦内をおてんばに駆け回り、カミーユとは事あるごとに対立。そのことに彼はウンザリしていたようだが、暴走しがちなカミーユを止めるのはシャアでもエマでもなく実は彼女だった。後に完全に和解、彼の精神崩壊に合わせて(新主人公の登場に合わせて)アーガマを降り、献身的な介護をした。戦後は月で看護婦になったらしい。
「アンタたち…!!」

アポリー・ベイ中尉

一般兵・パイロット 一年戦争以来のベテランパイロットとしてシャアに従軍、数々の戦線を潜り抜けてきた鼻のデカイ青年。戦後はエゥーゴに参加、MkIIの強奪以来、ロベルトと共に常にシャアの左右を固めている。何でも屋として才能を発揮、リックディアス隊の隊長を勤め、シャトルの操縦もやってのける他、AE社の裏事情にも詳しいようだ。そのうえ艦内での人当たりも良くて言うことのない存在だったが、ゼダンの門の戦いにおいてファを守り、ジェリドの手で葬られる。目立たないわりには出撃回数も多く、サポート役ながらも大活躍した。一年戦争の際にはリック・ドムに乗り、シャア共々アクシズに流れ着いたという。

ロベルト中尉

一般兵・パイロット アポリーと共にクワトロを支える、一年戦争をも戦い抜いたベテランパイロット。口髭がとってもダンディー。イロイロと事情に通じているようで、相棒同様エゥーゴ高官をどこか小馬鹿にしている節がある。地球へ降下、相棒が指揮するシャトルの打ち上げを護衛するためにリック・ディアスで出撃するも、ブランによって殺された。アポリーはその死を大変悲しんだが、クワトロは「いいパイロットだった」ということで割り切っていた。アポリー同様に詳しい経歴は不明ながらも、人柄だけで好かれるメンバーである。彼もまた、大戦時においてはリック・ドムに乗っていた。

エマ・シーン中尉

一般兵・パイロット 開戦当初はティターンズにいたものの、バスクのやり方に付いていけずエゥーゴへと寝返った女性士官。保護観察として扱われたが次第に信用を得、一線級のパイロットとして活躍するようになる。しかし理想主義者のため、反発する子供に対しては正義をかざしてすぐビンタ。ビンタビンタビンタ。理知的だが意外と繊細、ヘンケンの告白にもハッキリと返事のできない可愛らしさと、軍人の父から受け継いだ厳格さを持ち合わせていた。人格的には大人7割の子供3割な人で、後者のほうがとても良いチャームポイントとなっていたが、最後の最期でレコアと相討ちになり、カミーユに全てを託して逝った。そののち亡き骸はコロニーレーザーで消し去られる。ちなみにかつてアムロと出会ったこともあった……て、これはチト無理のあるエピソードだな。
「私の命を吸って!!――そして、勝つのよ」

レコア・ロンド少尉

一般兵・パイロット かつてはゲリラとして、常にギリギリのところを生き続けてきたという危険な女性。一年戦争時に両親を失い、「生死の狭間をさまよっていないと生きた心地がしない」という理由からエゥーゴに参加。何か特別な雰囲気があったのだろう、クワトロに好かれる。しかしジャブローで受けた屈辱、自分を一人の女性として扱ってくれないアーガマの乗組員に愛想を尽かし、シロッコに惹かれてティターンズへ入隊。毒ガス作戦の指揮を執った他、監視付きながらもティターンズの兵としてシロッコのもと戦っていた。ゼダン宙域でもハマーンを追い詰めるほどの実力を見せ、その後はグリプス2の空域でエマと交戦するが、刹那の差で敗れて死亡する。そんなカテジナ以上にワケの分からない彼女のことを、エマは「女であり過ぎた」と感じた。一度何かを間違えると、人間ここまで無茶苦茶になれるのかといういい見本であろう。
「お仲間か…」

ヘンケン・ベッケナー中佐

中級司令官・艦長 一年戦争を戦い抜いた歴戦の艦長。エゥーゴ参加後は新造戦艦ラーディッシュを指揮する。顔はイカツク、性格は豪快。しかしエマさんのこととなると顔を真っ赤っ赤にして照れくさがる大変可愛らしい人物。「キミが赤ちゃんを産めんような身体になると」と放射能汚染を気にしていたが、それは下心ではなく、ヤザンの手から艦を張って彼女を守るという行動からも本心からの言葉だったのだろう。また、彼の私情だけで艦を楯にしてしまったことに、不平ひとつ言わなかったクルーからの人望も認めてあげたい。
「エマ中尉…」

フォウ・ムラサメ少尉

ニュータイプ・強化人間 ムラサメ研究所で作られた、どことなく加虐心の煽られる「4番目」の強化人間。過去の記憶を取り戻すために仕方なくナミカーに従い、突如襲い来る破壊衝動に駆られてホンコンシティを大爆走。脳波の異常には逆らえず、薬なしでは生きてゆけない身体となっていた。唯一の救いはカミーユと「解り合えた」ことで、それは命を賭けてでも彼を宇宙へと送りたいという想いとなる。後にキリマンジャロ基地で再会を果たすも、彼女に施された強化はもはや取り返しのつかないレベルになっており、再び雪山を大爆走。しかしカミーユを狙うジェリドの姿に正気を取り戻し、彼をかばって命を落とした。結局最期まで、「記憶」を取り戻すことは叶わなかったのだ。ちなみに実はただの不良少女で、本名をキョウというらしい。あれだけドンヨリとしたベールで覆うからには何か物凄い背景がありそう、と思わせておいて実は何も無かった――何も無くたっていいじゃあないか、生きてさえいれば!――というアイダミツオ張りなことを身をもって教えてくれた、実に学ぶべきことの多い人である。
「苛められるの……厭なんだ……」

ジェリド・メサ中尉

一般兵・パイロット カミーユをライバル視する、地球育ちの「出戻りのジェリド」。頭は良くないが常にトップを狙うガキ大将だ。思えばグリプス1で彼に言った余計な一言でのせいでここまで酷い目に遭ってるような気がする。幾多の戦闘に参加、師匠と友人、そして恋人と数多くの大切な人をカミーユに殺され続けており(ヒルダとフォウを殺しておあいことはいえまい)、その復讐のため執拗に彼を狙い続けた。しかし不幸なことにそれは果たせず、今度は彼自身が殺されてしまうハメに。巧くジャミトフに取り入ったのだからそのまま上を目指していれば良かったような気もするのだが、彼のエリートとしてのプライドがそれを許さなかったのだろう。カミーユ「以外」の多々のエゥーゴ兵を葬りながらも肝心要のカミーユだけは決して傷を付けられなかった、しかもその死に様すら蹴飛ばされて火球入りという情けない結末では、彼の成仏はどう考えても一番難しいに違いない。ちなみに彼を主人公としたゲームブックまで出ているが、ここらへんのストーリーだけは変えられなかったようだ。
「ティターンズはチカラだ!!チカラがあってこそ、全てを制するんだ!!」

パプティマス・シロッコ大尉

ニュータイプ・強化人間 木星船団の指揮官にして、危険な組織ティターンズを内側から食い破る更に危険な男。ヘリウム3を手土産に地球圏へと帰還、いち早くジャミトフに恭順の姿勢を見せ、誓約書に血判まで押して信任を得た。相手を完全に信じ込ませなければならない場所で彼が敢えて芝居掛かって見せるのは、全て計算ずくでのことなのか、それとも彼の我の部分なのか。バスクの不審を背にもドゴス・ギアを預けられてからは、独断専行に加え前にも増して上官に対して無礼な態度で接し、当て馬にされたことに激怒したジャマイカンからは頬を打たれる一幕も。これだけ怪しい男、一体誰が信用するというのか。そののち艦をバスクに返上してからはジュピトリスに戻り、腕は良いが頭の弱いパイロットたちを次々と味方に付けてゆく。ヤザンを筆頭とした言うなれば「シロッコ軍」は、ハマーンのグワダン会談において艦を攻撃、遂にはシロッコ自身も混乱に乗じてジャミトフを暗殺し、後ろ楯を無くしたバスクをも謀殺。宿り木をことごとく斬り倒してもなおティターンズにおいて大きな勢力であり続けられる彼の生命力や、恐ろしいものがある。しかし政争では勝ち残った彼も戦場においてカミーユに敗れ、彼の心を道連れに戦死。まあトータルしていえば「結局何をしたかったのかが全く解らない男」で、何と言うか、所詮「カッコイイ悪役」止まりの人。マクベやシーマといった連中とは別の意味で尊敬できないカリスマ冷血漢だった。ちなみに彼は優れたMS設計技術を持っていて、メッサーラを始めとした異型機たちはみな彼によるものであり、木星圏を中心に強大な勢力を有していたが、タイラント部隊との戦いでその数十機からのメッサーラ軍団を撃破され、のっぴきならなくなって地球圏に逃げ込んできたという説もある。木星帝国がガンダムの設定に刻まれる前、まだ木星に妖怪とか異星人の遺跡とかイデオンがあった頃のお話だ。
「決められた役割を演ずるというのは、難しいものだな……」