ガンダムの歴史/第8集〜地球を滅ぼす敵
クロスボーンガンダムのストーリー
戦後、前述の通りベラは貴族主義を否定。コスモ・バビロニア建国の夢も、儚くついえた。
しかしその10年後に襲い来る脅威は、従来の常識では全く理解できない程にチープで、そして戦慄すべきものだった。
グリプス戦役においてティターンズを大混乱に陥れた男、パプティマス・シロッコ――。
彼が尉官(劇場版は大佐に修正)という地位にありながら部隊を、軍を思うが儘に動かせたのも、彼の背後にそびえる木星船団の力があればこそだった。
彼が活躍した当時は、木星から持ち帰るヘリウム3(石油、ウランに代わる新たな燃料物質)のみの、政治的・財力だけの存在であったが、今や木星船団は、木星近海にコロニーを建設するまでに到り、国家として大きな力を持ち始めていたのである。
当初は連邦も、それをさしたるものと考えてはいなかった。コスモ・バビロニアを容認したよう、連邦の圧倒的な財力で一飲みにできると考えていた。
しかし、ドゥガチが総統の地位に就き、「木星帝国」が国家としての態を整えるにつれ、次第に無視できない勢力となっていった。
連邦政府はドゥガチを抑えるため、彼に政略結婚を申し込む。そして、地球と木星との親交を深めるため、定期船には交換留学生が乗せられた。
独裁国家に対し、連邦の手は宥和に過ぎる。
しかし、木星帝国に対し策を講じたのは、なにも連邦だけではなかった。
地球圏には、零細ながらもクロスボーン・バンガードが残っていた。
彼らもまた、ドゥガチの邪悪な胎動を感じ取ったもののひとつである。だがCV軍の指導者層は前回の戦争でその殆どが死に、最早残っている者こそ少なかった。
今回CVの指揮を採ったのは、ベラ・ロナ。かつてのラッキー・ガールである。
彼女はマイッツァーを否定したのち新造艦にて地球圏を脱し、その船の沈没に巻き込まれ、公には既に死んだことになっている。そして前回レジスタンス側に属し、旧友としてベラを説得した青年シーブックもまた、この艦にて死亡したことになっていた。
彼らの行動は主に奇襲。海賊に扮し、木星帝国の戦力を削ぐことにあった。
だが、戦力の差は激しい。
木星側が惑星を丸々一個お膝元としているのに対し、CV軍側はたかが戦艦一隻のみ。故にその差を埋めようと奇襲に次ぐ奇襲、そして捕らえたパイロットを敵に送り返し、彼らを結果ドゥガチの手で処刑させ、帝国内部にドゥガチへの反感を植え付けていくという、地道な方法まで使っていた。
しかし、木星に対し徹底抗戦を続けるCV軍旗艦・マザーバンガードは、ベラの従姉妹にして極端な和平論者のシェリンドンによって拿捕されてしまう。そして彼らは、「平和を脅かすもの」として、連邦軍に引き渡されるという危機に陥る。
一方の木星帝国はといえば、連邦との和平が続く限りその「隣人としての顔」を崩そうとはしない。その悪魔の優しい横顔を信じているのが、シェリンドンという人であった。
だが事態は変わる。
軍備を整えた木星帝国が、地球に向けて敢然と侵攻してきたのである。
ここに到り、連邦は初めてCV軍の活動が正しかったことを知るが、もはや状況は最悪だった。地球上の基地という基地はそのほとんどが潰され、連邦がドゥガチの悪意に気付いたときには、もう手の打ち様がなかったのである。
全面核攻撃まで、既に残り24時間を切っていた……。
だが、こんな絶望的な状況にあってもCV軍は諦めなかった。彼らはガンダムを駆り、宇宙へと上がる。
そして、衛星軌道上でドゥガチ率いる大部隊と交戦。乗艦を大破せしめ、ドゥガチ本人もまた、CVと連邦の連携攻撃によって撃破されている。
こうして、結果的に地球は守られた。
鋼鉄の七人の背景
滅びたかに思われた木星帝国は、三年後に復活した。ドゥガチ亡きあとカリストが新総統の座に就き、再び連邦に牙を剥いた。彼ら新生木星帝国は、「シンヴァツ」という名のコロニーレーザーを用い、地球の破壊を目論んでいた。
遠く木星に住み、地球からの物資がなくとも自活のできる"木星人"となっていた彼らにとって、地球とは、帝国上層部の人間にとっては憎悪の、それらの圧政に苦しむ国民にとっては憧憬の対象でしかなく、いわば飾り物に過ぎなかった。
一方、地球に住む者たちもまた、地球に対する関心を失っていた。コントリズムやエレズムの盛んだった時代は遠く過ぎ去り、木星から一直線に地球を狙う恐怖の兵器に対し、情報のアンテナを張り巡らせた者はもはや存在しなかった。
かつては蜂起を知りつつ、クロスボーンを庭先で自由に遊ばせていた連邦とは、わずか10年にして隔世の感がある。新総統の姉・エウロペが伝えるまで、まさに誰一人としてその狂気に気が付いていなかったのだ。
レーザー発射までの時間、そして木星までの距離を考慮すると、確かにやむをえない点はあったが、この事態に対処できたのはわずか7機の新鋭MSだけであった。彼らは二人の新総統(光と影が存在する)を倒し、さらにコロニーレーザーも破壊し、大きな犠牲を払いながら、地球圏へと帰還した。
※この作品には、後の『V』へと繋がる多くの描写が含まれている。特にカリスト兄弟が用いたサイキック能力は特筆すべき部分である。 おそらく、木星船団時代のカガチはこの能力を知っていたのだろう。そして、エンジェル・ハイロゥ計画に応用できないかと考えた。逆説的ではあるが、カガチの敗因はこの能力を過大評価した点だ。およそ八億キロ離れた木星と地球とで二人が交信できたのは、カリスト自身に高い能力があり、それは木星という過酷な環境に住むことで開花したものだろう。カガチはサイド2市民にそれを求め、エンジェル・ハイロゥに閉じ込めたのだ。しかも、コントロールルームに立つのはインチキ占い師とその娘である。仮に二人に何らかの能力があったとしても、それはニュータイプという言葉で解決のできる程度のもの、サイキッカーには遠く及ばなかったに違いない。「機械の反乱」は起こるべくして起きたのだ。
