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ガンダムの歴史/第7集〜己を欺く破壊者に宇宙は戦慄した

漫画・ガンダムF90の背景

U.C.0120年代は、クロスボーン・バンガードの時代である。
UC二桁代に宇宙を席捲したジオンの脅威は完全に去り、今や彼らは瀕死の病人となっていた。
そして、老兵の挽歌が最後に唄われたU.C.0120は、第1次オールズモビル紛争の年。
彼らは連邦の輸送艦を襲ったのち火星に潜伏し、ノヴォトニー提督率いる第13艦隊を僅かな戦力で釘付けにし、そして惑星の火山を利用した兵器オリンポス・キャノンにより迫り来る連邦軍を一網打尽にした。が、彼らは、所詮は生き残りの老兵に過ぎず、戦果もまた、小さなものでしかない。火星に残るオールズモビル軍は、爆発に巻き込まれ全滅した。

※火星独立ジオン軍は、シャアの率いた再興ネオ・ジオンの残党であり、地球圏を追われた老兵の集まりであった。宇宙世紀の小野田さんのような存在であったデラーズフリートに対し、こちらは単なるテロリストである。U.C.0099の自治権放棄により、ネオ・ジオンはおろか、ジオン共和国さえ消滅してしまったため、彼らが帰属すべき国家は連邦以外に存在しないのだ。しかし、後に登場するガレムソンのような連邦軍人が、ジオンの残党狩りを残虐に行なっていた事情を加味すれば、彼らが投降せず、頑なに抵抗していた理由も忖度してあげたくなるというものである。

ゲーム・フォーミュラー戦記0122の背景

しかし、この火星独立ジオン軍と行動を異にするオールズモビルの別働隊は、二年後のU.C.0122、再び連邦軍を相手に大立ち回りを演じることとなる。
彼らは当初単独で連邦軍に攻撃を仕掛けていたが、ガードナー中佐の部隊を前に後手後手に圧され、遂には彼らの黒幕・クロスボーン・バンガードが連邦軍にその牙を剥くこととなる。連邦にとって、新たなる敵の出現だった。
クロスボーン・バンガード(以下CV軍)。
サイド4のフロンティアコロニーに誕生した新興組織、コスモ・バビロニアの軍隊である。
しかし今はまだ国家と呼べるような集まりではなく、彼らは建国に向けての暗躍を続けていた。

その指導者をマイッツァー・ロナといい、ロナ家の家長にしてコスモ貴族主義の提唱者である。
彼は「大衆は貴族によって正しく導かれねばならない」という一種の選民思想によって大衆を魅了していた。
しかし、この貴族というのは決して家名や血統の上での意味ではなく、極めて曖昧な定義によるものであった。故にこの思想は十年後、自らの孫娘によって覆されることになるのだが、この時点ではまさにCV軍の行動指針そのものであった。
マイッツァーは娘婿のカロッゾを使い、CV軍の戦力を整えさせる。
軍を任された彼は、家の名に押し潰されぬようエゴを強化。鉄仮面を被った結果、マイッツァーにすら御し切れない狂気の悪魔に成り果ててしまった。
そして、カロッゾことこの鉄仮面は月軌道へと艦隊を進め、そこで連邦艦隊と衝突。この戦いに敗れたCV軍は、デハーヨ大佐のもと連邦本部に向けての隕石落としを画策。しかしこれもガードナー中佐によって阻止され、結局CV軍の第1次蜂起は成功しなかった。
ところで、彼らの支援を受けたオールズモビルであるが、指揮官シャルル少佐の奮戦虚しく、CV軍の宇宙要塞における戦いに敗北、壊滅している。あの一年戦争から43年、ここにジオンは、正史の上において完全に滅亡したのである。

※火星に潜伏した老兵ばかりのオールズモビルに対し、こちらのオールズモビルを指揮するシャルル(最後のジオン兵というべきか)は25歳の青年だった。彼は、過疎の山村から上京した若者のような存在だったのであろう。ジオンを名乗るのがジオンの息子であったよう、オールズモビルを継承するのはオールズモビルの残党こそが相応しいし、平和なこの時代、オールズモビルとしての実戦経験がなければ、ザビ家の血でも引かぬ限り兵たちの信望も集まるまい。一方、彼はいとも簡単にクロスボーンの駒とされてゆく。たかだか数十機のMS部隊を"我々の組織を独立国家と認めるのだ"と言ってみたり、シャアの叛乱時代を知る優秀なブレーンが近くにあれば、こうも間の抜けた決起にはならなかったものを、この若いゲルググ乗りは妙におぼこいのだ。綿密に練られたシッガルト事件などと比べると、隔世の感がある。

※想像ではあるが、この時期のカロッゾとストアスト長官は、まるで噛み合っていなかったのではあるまいか。オールズモビルはエイブラム艦隊との戦いで大ダメージを被った後、隕石落としや宇宙要塞への籠城など、クロスボーンの援助を受けつつ、わりと派手な抵抗を続けている。当初、連邦はオールズモビルのテロ行為に対し、エイブラムによる征討という厳しい措置をとっていた。これは二十年前のジオンの自治権放棄を政治的勝利ととらえたであろう連邦の立場から考えれば当然の対処といえるが、わずか一年後、連邦はカロッゾの野望に屈しているのである。つまり、ブッホ・コンツェルンの財力をしても蜂起〜独立国家建設の容認がなかなか取り付けられず、「オールズモビル程度の組織でさえ、我々が財力・技術力で援助をすればこれほど大きな事ができるんだよ」という、カロッゾお得意の恫喝に切り替えたのではあるまいか。カロッゾもストアストも、オールズモビルがごとき抵抗など連邦が本気を出せば一揉みにできることなど分かっていただろう。分かっていてなお、カロッゾとしては「どれだけ被害を出せるか勝負だ」、ストアストは「どれだか容易に鎮圧できるか勝負だ」といった心持ちで交渉に臨んでいたに違いない。
そして折れたのがストアストだった。未遂に終わったとはいえ、隕石落としをされてはおしまいである。しかも、当初は無関係を装っていたクロスボーンが実際に戦場に出てきたのを見て――(朝鮮半島でミグ戦闘機を見た米兵のような気分か)――事態の急を悟ったのだろう。猪突してくる相手は受け流すにかぎるとばかり、ストアストは宥和政策へと舵を切った。あるいは彼は、自らの手を離れたところで、軍部の誰かがカロッゾを倒してくれることを見越していたのだろう。この時代の連邦の政治家たちは、いくら敵に譲歩しようとも自分たちの足下に火が着くとは考えていなかった。それほど軍の実力を信用しきっていたといえる。そこまで余裕があった連邦が腰砕けになり、宇宙戦国時代を招来せしめたのは、やはり木星帝国の全面的な連邦基地破壊が大きいが、ドゥガチの娘・テテニスの年齢を考えると、連邦が宥和政策を積極的に用い始めたのもこの頃からと考えられる。ホワイト提督のハマーンへの譲歩、アデナウアー次官のシャアへの譲歩は、いわば怠惰の譲歩にすぎないが、次第に実力が伴わなくなり、秩序を乱す者たちに対して余裕の素振りを見せるうち、とうとう本当に余裕がなくなってきたのがこの時代といえるだろう。

漫画・シルエットフォーミュラ91の背景

さて、次なるはCV軍の全軍蜂起である。
しかし時同じくして、ある一団の暗躍があった。ガレムソン中佐とその一味である。
彼らは連邦の軍人でありながら、禁止されているジオンの残党狩りをハンター感覚で行なっていた。
そして、その非道な連中と接近したのが、CV軍のシェフィールド大尉。それらふたつの軍隊に翻弄されたのが、あのエゥーゴを生んだ月の企業アナハイム社だった。
このゼブラゾーン宙域における戦闘のはガレムソン中佐の死をもって終結するが、その裏では連邦とCV軍が、蜂起の黙認などの黒い約束を交わしていた。

※ジオンが倒れた今、地球圏における騒擾の火種はクロスボーンでしか有り得ない。しかし、この作品で悪役を演じるのは他ならぬ連邦軍であった。ガレムソンがごとき快楽殺人者は、ウェンツェル大佐のような人間の駒でしかなく、ウェンツェルは、アナハイムとクロスボーンという、この事件に関わった組織全てにパイプを持っていたようだが、おそらくその目的は、サナリィのフォーミュラ計画をアナハイム側にリークし、リベートを得ることにあったと思われる。あるいは良いほうに考えれば、ウェンツェルと密会したアナハイム側担当者が"クロスボーン蜂起があれば連邦は我々を必要とする"という主旨のセリフを発していることから、フォーミュラ計画を漏らすことでシルエットフォーミュラの性能を高め、後の採用の選択肢を拡げることにあったとも考えられる。だが恐ろしいのは、連邦軍もアナハイムも、クロスボーンの蜂起を事前に知っていて、あまつさえ、それを経済活動に組み込んでいたことである。現実の世界でも"真珠湾攻撃を米軍はどれだけ予期していたか"が議論になる事があるが、連邦軍はクロスボーンの危険性を知りつつ、芽を摘もうとはせず、その一方"鳴かせて撃つ"戦略を用いるでもなく、ただ傍観するだけだった。「テロや暴動による被害額よりベクトラの維持費の方が遙かに上」とは、『ムーンクライシス』において巨大戦艦ベクトラの寧艦を伝えに来た士官の言葉だが、シャアの叛乱後、宇宙移民者の生命は以前にも増して特に軽視されたようである。そして、この連邦の振る舞いが後にスペースノイドの自警と自立を促し、宇宙戦国時代を生み出してゆくのである。

ガンダムF91のストーリー

U.C.0123、遂に鉄仮面はその悪魔の本性を顕す。
フロンティアIへとその軍を進めた彼は、市街地を攻撃。
人間を殺す事のみのために作られた円盤兵器「バグ」を放出し、住民を皆殺しとする非道行為に出た。これは、いつの日か地球で使うためのテストを兼ねているという。

対する連邦側は、政府高官ストアストの密約通り、確たる対処をするでもなく、ただひたすら時間を費やすだけだった。確かに政府高官はそのような腐敗、怠惰ぶりを見せていたが、しかし現場の連邦軍はそうではない。命の危機に直面するだけ、必死にならざるを得ない。
彼らはレジスタンスを組織して、迫り来るCV軍に対抗。
それでも民間団体が主戦力である以上、また、軍縮による兵器の旧式化もあって、両軍の戦力差は明らかだった。
そんなあるとき、ひとつの奇跡が起こる。それは鉄仮面の娘・ベラの裏切りである。
彼女がレジスタンス側に籍を移したことで、完全にCV軍の武運は消えた。新型ガンダムと共に戦場に出るベラは鉄仮面を追い詰め、ついには撃破せしめたのである。

※クロスボーン・バンガードは、ブッホ・コンツェルンの私設軍隊であり、かつてエゥーゴがアナハイムをスポンサーとした以上に、財界との強い結び付きを持っていた。そしてそのブッホ・コンツェルンもまた、連邦を敵視しつつも、連邦との強いパイプにより存立する企業であった。かつては自治権のジの字を口にしただけで経済制裁を加えてきた連邦に今やあの頃の気概はなく、「独立は力で求めれば手に入る」ことが知れ渡り、ストアスト長官らの軽い振る舞いが、後の宇宙戦国時代を招来せしめたといっても過言ではないだろう。