ガンダムの歴史/第6集〜難民たちは一人の英雄に未来を託した
逆襲のシャアのストーリー
大事が起こるのはU.C.0093。シャアの反乱がそれである。
※余談ながら、この戦いが"第二次ネオ・ジオン抗争"と呼ばれ"戦争"の名を与えられていないのは、あるいは、ハマーンもシャアも、ネオ・ジオンを国家の体にしなかったからであろう。連邦を油断させるため、または、ジオン共和国と"ジオン国家"が並立することで、後のサイド3帰還の障害になるのを恐れたのであろう。
シャアは、コロニー・スゥイート=ウォーターを占拠。そこを支配下に置いた(ここは戦争難民を収容したコロニーという事情もあって連邦に不満を持つ者も多く、一年戦争の英雄シャアは好意的に迎え入れられた)。戦力はハマーンのネオ・ジオンのものがそのまま受け継がれ、彼はまさに、労することなく全てを手に入れたのである。
そして手始めに、隕石フィフス・ルナを連邦本部ラサに向けて投下。ジャブロー・ダカールに代わる連邦の中枢は、シャアによって一撃のもとに破壊されてしまう。
クリティカルだった。
それでも、戦力の上での連邦の優位は変わらない。連邦の総反撃があれば、ネオ・ジオンなど一揉みにされてしまうであろう。
にもかかわらず、連邦の参謀次官アデナウアーは、短慮と焦燥の果てにシャアと交渉。シャアにアクシズを与えるという融和懐柔策に出た。難民の暴動ならば土地を与えれば良い、シャアごときはその一自治領主に封じてしまえ、という発想だ――。が、策にはまったのはシャアではなく連邦のほうであった。
小惑星アクシズは、ハマーン戦争の折りグレミーによってその一部が破壊され、以降は連邦の管理下にあった。シャアは、その「土地」と交換にネオ・ジオンの武装解除を約束。その実行は、連邦の拠点・ルナツーにて行なうという。
しかし、シャアにその気はなかった。
武装解除のその日、シャアは、単身アクシズに向かっていた。そして、投降を理由にルナツーに接近した麾下の艦艇は、一斉にその砲門を開くのである。
連邦軍の宇宙における拠点として、一年戦争の昔より広くその武を知らしめてきたルナツーは、ネオ・ジオンのわずかな部隊によって制圧され、そこからは核弾頭ミサイルが持ち出された。
これこそが、シャアの真の目的だったのである。
彼は小惑星アクシズを地球に落とし、かつ地表近くで核爆発を起こし、地球を核の冬に包むことを望んでいたのだ。宇宙の難民問題やスペースノイド弾圧といった根底問題は、結局「人類全てを宇宙に上げねば解決を見ない」と考えたのである。
このシャアの野望に対抗したのが、連邦の生ける伝説・アムロである。
彼の初陣は実に16歳。しかも、一度マニュアルを見ただけでモビルスーツを動かしたという天才だ。
そして、その頃から、アムロとシャアの宿命とも呼べる戦いを見続けてきたのが、連邦軍の特務部隊ロンド・ベルの指揮官・ブライトである。彼もまた、かつてシャアとは幾度となく敵対し、幾度となく共に戦ったことのある男だ。
カードは揃った。
対決の時は、すぐそこまで近付いている。
シャアとアムロの因縁
ところで、このアムロとシャアとの間には、言葉やイデオロギーでは解決のできない、決して和解のならない大きな因縁があるという。
それはあの一年戦争のおり、シャア自ら率いるニュータイプ部隊に所属していた女性パイロット・ララァを巡ってのことだ。
その頃シャアはララァの感性に惹かれ、彼女に愛情を抱いていた。
しかし、その間に割って入ったのがアムロだったのだ。
彼もまたララァに惹かれていたのだが、シャアとの戦いの最中、判断を誤って彼女を殺してしまう。それは、アムロの攻撃からシャアを守ろうとした、ララァの突出が故のことだった。
この複雑な関係のため、二人は対立しつつも根源的な敵とは認識できず、グリプス戦役では共闘まで見せている。シャアは、全スペースノイドの代弁者として連邦に挑み、そしてアムロは、連邦の一パイロットとして彼と激突した。
地球を目掛け、落ちゆくアクシズ……。
アムロは決死のトライを仕掛ける。
なんと、乗機である新型ガンダムをアクシズに取り付け、その腕で隕石を押し出そうというのだ。常人には思いもつかぬ、奇抜にして無謀な行動――!かくてアムロとシャアは戦いのさなか行方不明となり、アクシズも進路を変え、遂に地球を直撃することはなかった。
シャアの脅威は去ったのである。
小説・ガンダムUCの背景
だが、宇宙にはまだもう一つの「戦争の火種」が残っていた。
グリプス戦争の末期、シャアがアクシズより連れ出した王女ミネバがそれである。彼女はハマーンの死後エゥーゴに投降したが、実はそれは影武者であり、本物の行方はようとして知れなかった(UC0096、ミネバが再び歴史に姿を現す小説が、福井晴敏氏によって現在進行中である)。
漫画・ムーンクライシスの背景
U.C.0099、ジオン軍が三たび再起した。
今回の首班はハウエル中将。一年戦争時代より参加する、究極のジオン軍人である。
彼は生ける火薬庫ミネバを擁し、連邦軍に挑む。が、彼の月面都市制圧計画も、ヌーベルエゥーゴを率いるタウリンの暴走により失敗。ミネバは再びその姿を消した。
だが、連邦政府ゴールドマン大統領の宣言、ジオン共和国の自治権放棄によって、戦争のために彼女を担ごうとする者はもう現れないだろう。
※非公式コミックでさらりと描かれてはいるが、これは大きな事件である。かつてジオン・ダイクンは、宇宙移民者の自治を求めて"ジオン共和国"を興し、ザビ家の乗っ取りで"ジオン公国"と名を変え、ダルシアによる亡国回避のための活動、ネオ・ジオンによる再起など、サイド3国民にとって、ジオン国の名は自分たちの独立の証、または、いつの日かを照らす希望の光であり続けたであろうからだ。このシッガルト事件には、共和国派・公国残党・アクシズ派の三派がいずれも関わっていた。そして、その責任を問われて共和国は自治権を放棄した。この事件以後もオールズモビルと名乗るジオン軍残党が地球圏を荒らし続けるが、彼らはデラーズフリートなどとは異なり、単なるテロリストである。彼らの活動に根拠を与える国家は、このとき消滅しているからだ。
小説・閃光のハサウェイの背景
それから、地球圏には暫しの平和が訪れる。
ロンド・ベル隊長ブライト大佐の息子・ハサウェイが起こしたアデレード議会襲撃がU.C.0105に、妻の死を連邦に隠匿された怨みから、反地球連邦組織FA-MASと組み、ルナツーを大混乱に陥れたウェラー中佐の反乱がU.C.0107にあったのみで、これといった大きな事件は発生しなかった。
※アデレード議会襲撃事件を鎮圧したケネス大佐は、謎の多い人物である。彼は企図せずして、討伐対象であるハサウェイと接触したが、彼を処刑したのち退官。日本へと渡った。『閃光のハサウェイ』以降を舞台にした作品のうち、『クロスボーン』においてはマザーバンガード一派の、『V』においてはリガ・ミリティアの、それぞれ結成に関与したとされており、これはケネスの先見性と強い反骨心を示すものだが、本作から100年後を舞台にした『ガイア・ギア』においても、シャア再生計画に携わっていたといわれている。これを、リガ・ミリティアを興してなお連邦体制を変革できない閉塞感の打破を、シャアの復活という安易な方法に求めた老革命家の迷妄とみるべきか、それともニュータイプが活躍できる場を作っておきたいという、退官当初の理念に沿ったものとみるべきか。ZZの主人公ジュドーが、老いてなお若者たちの行く末を案じていたのを思えば、ケネスでは後者であってほしいと思う。
