ガンダムの歴史/第4集〜男たちの描いた夢
ガンダム・センチネル〜前半のストーリー
ジャミトフの死を、「エゥーゴの暗殺である」と囁くひとつの部隊があった。
小惑星基地ペズンに駐留する教導団の面々である。
彼らは地球至上主義を支持する極右集団でありながら、ティターンズにもエゥーゴにも属さない正規軍最強の部隊であった。平時においては戦闘用コンピュータのデータ収集を主任務としていることからも、彼らの実力は推して知ることができよう。
彼らは「ニューディサイズ」を名乗り、連邦に喝を入れるべく立ち上がった。
彼らは言う。
「エゥーゴが勝利した今、政府も軍もエゥーゴにシンパシーを抱くスペースノイドの代弁者ばかりで、地球人の主張は無いに等しい。本来地球連邦とは、そこに住むアースノイドによって動かされねばならず、政府がそれに気付かないのを看過することはできない。喝入れが必要だ――」。
これが、決起の理由であった。
※彼らは教導団という部隊に属し、ティターンズの構成員ではないが同じ紺の軍服をまとい、思想的に近いジャミトフを慕っている。ちなみにニューディサイズという集団は、そのモデルが新撰組であり、隊員の名前もそれをもじったものが与えられ、さらに、転戦した地もまた、新撰組が辿った地名に似たものが付けられている。彼らは新撰組同様、秀でた武芸で身を立て、去りゆく者に殉じる気概を見せた(管理人祖先の地・宇都宮を焼いたのは頂けないが)。
この討伐にはエイノー提督以下の一大艦隊が組織され、これには彼の教え子ヒースロウ少佐も含まれていた。
しかしこのときエイノーは、ニューディサイズと密かに結び、軍を裏切り彼らに協力する腹を決めていた。彼もまた、地球を憂う者だったのだ。
一方ヒースロウ少佐にとっては、これ以上ない最悪の事態となる。
軍最強の部隊と、かつての師が組んだのだ。
それでも、彼は任務を遂行せねばならない。しかし、今や教導団の戦闘テクニックに加え、エイノー艦隊の数までもが併ったニューディサイズに対し、士官学校を卒業したばかりの新人キャリアである彼では、あまりにお粗末なカードであった。その上、率いる部下が愚連隊では勝利など望むべくも無いだろう。
ニューディサイズの副司令を勤めるトッシュ大尉は、手始めに、本拠地ペズンで討伐隊を迎え撃った。無論ヒースロウは百戦錬磨の部隊相手に苦戦を強いられるが、妙計によってこれを陥落せしめ、ニューディサイズをいずこかへと追いやるのに成功する。
以後、彼らは流浪の戦いを強いられることになった。
姿を消したニューディサイズが次に現れたのは、月面都市エアーズ。
トッシュはここを拠点に月面都市の政府を樹立し、連邦へのカンフル剤とすることを望み、エイノーもまたこれに協力する。
しかし、ニューディサイズのリーダーでありながら一介のパイロットに止まった武人ブレイブ大尉がこの戦いによって戦死した上、頼りであった他の月面都市も遂に同心することなく、彼の計画は完全に狂った。
ガンダム・センチネル〜後半のストーリー
常識で考えれば、ここで反乱は幕引きとなる。
完全なる失敗として、法廷で裁かれるのが通常の流れだ。
しかし彼らはエアーズを脱し、何の因果かネオ・ジオンの戦艦に拾われてしまうのである。一説には隊の中に内通者が居たともいう。
トッシュを前に、七年前の敵将・トワニング少将は言った。
「諸君らは選ぶがいい。ネオ・ジオンに参加するか、あるいはこのまま去るか」と――。
ニューディサイズの結成理由は「連邦に対する喝入れ」であり、決して反旗を翻したわけではない。地球至上主義をとる彼らが、スペースノイドの極端な存在であるネオ・ジオンに参加するなど、考えられないことである。
トッシュはニューディサイズを解体しつつも、続投を決意。彼を慕う一部の者は、最後の花火を打ち上げるべく個人戦へと突入した。
一方、連邦のできるだけ永い間の混乱を望むトワニングは彼にモビルアーマーと巡洋艦を与え、そして見送る。
それぞれの思惑の中で、トッシュはこれを地球に落とす決意をした。議会を破壊できれば、地球人による地球人の政治が帰ってくるだろうと信じて……。
しかし、成長したヒースロウを前に彼らは全滅。エイノー提督も投降し、ここにペズンの反乱は終結する。
哀しいかな、その後の政府要人の動きを見ていると、たかが一反乱で揺らぐほど「連邦政府の日和見主義」も軟ではなかったようである。
新撰組が五稜郭に散り、時代が文明開化へと移ったよう、ティターンズの掲げる地球至上主義は衰退し、スペースノイドの自治思想が連邦を席捲しつつあった。連邦の主流はエゥーゴ関係者やそのシンパシーで占められ、かつてジオン・ダイクンが求めてやまなかったスペースノイドの独立が、今度は連邦の手で進められようとしていた。
しかし、蘇ったジオンがその邪魔をした。
かつての暗愚な連邦が、コロニーを植民地として扱ったよう、新たに現れたアクシズは、スペースノイドの独立という高邁な理想を捨て、領土的野心を剥き出しにした。
宇宙世紀は"極端から極端"への繰り返しである。
時間がここで止まったなら、宇宙移民者を思いやる連邦政府という、理想的な社会が花開いたかも知れない。
しかし、時代はジオン同士の私闘へと突入しようとしていた。
