ガンダムの歴史/第3集〜突出した政治家たちの対立
Zガンダム〜プロローグ
後に「デラーズ紛争」と呼ばれる戦いは、デラーズ・フリートの壊滅によって終結した。
しかしこの「中途半端な」連邦への攻撃は、より激しい報復をスペースノイド(地球に住む民をアースノイドといい、これに対比して宇宙に住む民をこう呼ぶ)にもたらすことになる。
「ジオンの残党狩り」という名目で結成されたティターンズだが、しかしその攻撃対象は連邦の支配に手向かうスペースノイド全てに向けられていた。
その最たる実例が、U.C.0085にバスク大佐が起こした30バンチ事件である。
この事実は一般には伏せられたものの、コロニーへの毒ガス注入というセンセーショナルな事件をアンダーグラウンド誌が放っておく筈はなく、いつしかコロニー市民の周知の事実となっていった。
そして、この暴虐に憤り立ち上がったのが、連邦のブレックス准将を旗頭とするエゥーゴだ。反地球連邦組織の名を冠してはいるが、その実態はティターンズを嫌う連邦軍人の集団だった。
このエゥーゴには、実に意外な人物が参加している。
それはクワトロ大尉こと、シャア大佐。旧ジオン軍で「赤い彗星」として恐れられた人物である。
彼には、ジオン軍のエースパイロットという他に、もうひとつの顔があった。
その正体とは、かつてサイド3においてスペースノイドの独立を叫んだ偉大なる指導者――ジオン共和国の国父ジオン――その息子。
すなわちこのシャア・アズナブルとは、「連邦に対抗して建設された国家・ジオンの王子」ということになる。
※ティターンズのバックボーンは連邦軍だが、エゥーゴは、主力を連邦の革新派将兵で構成しつつも、その背後にはアナハイム・エレクトロニクス社が存在していた。アナハイムは、いわば死の商人である。エゥーゴのみならずティターンズにも兵器を卸すことで戦争を永続化させようと目論み、利益を得ていた。
※後の敗北により、ティターンズの名は反逆者として連邦史に刻まれることとなったが、エゥーゴの名もまた、結成当初の理念から掛け離れ、ティターンズが自作自演した「リアル・エゥーゴ」は置くとしても、後に旧フランス領区の過激派は「ヌーベルエゥーゴ」を名乗り大規模なテロ活動を行なった。エゥーゴは「反地球連邦」の略称でありつつ、ティターンズ崩壊後の連邦軍の主力がエゥーゴ閥で固められていったため、あるいはロンドベルなども、エゥーゴを名乗る組織の追及には手心が加わったのかも知れない。
Zガンダム〜前半のストーリー
戦端を開いたのは、エゥーゴの側であった。
彼らはクワトロ大尉を尖兵として、ティターンズの本拠地「グリプス」へと送り込む。これ以降両軍は対立を深め、連邦本部ジャブローや、月の拠点フォン・ブラウン市を巡って争い、エゥーゴの地球における共闘組織カラバによるキリマンジャロ基地陥落を最後に、ティターンズは決戦の場を宇宙へと移した。
一連の両軍の勝敗は以下の通り。
ジャブローの戦いでは、ティターンズが基地そのものを核爆弾で破壊。拠点の移転が目的だったため勝敗と呼べるものはない。
続くフォン・ブラウンの戦いでは、ティターンズのアポロ作戦により戦艦が市街地に降下。ティターンズ側が勝利を収めている。
しかし、キリマンジャロの戦いにおいては、強襲作戦を発動させたカラバ(エゥーゴの地球上での共闘組織)が勝利し、ジャミトフは命辛々宇宙へと逃げ出すという結果に終わったため、宇宙ではティターンズが、地球ではカラバがという、実に歪な勝敗の推移となった。
Zガンダム〜後半のストーリー
しかしこの頃になると、後に「グリプス戦役」と呼ばれるこの戦いは、連邦の内紛としてだけでは片付けられなくなる。
それはアクシズの介入が故のことだ。
このアクシズとは、旧ジオン軍残党の一派で、そのうち最大のものをいう。
彼らは一年戦争末期に月を脱し、小惑星基地アクシズに潜伏。ザビ家に近しい軍人指導者マハラジャを長とし、また、組織の支柱が精神的なものにあったデラーズ・フリートとは異なり、物質としてザビ家の皇女を戴いている。
だが、この王女ミネバは幼少であるため、アクシズの指揮にはマハラジャの娘ハマーンがあたっていた。この野心家の摂政に率いられ、ついに彼らが地球圏へと舞い戻ってきたのである。
一年戦争におけるジオンの敗北から、実に七年後のことであった。
一方ティターンズはといえば、ジオン残党狩りのために組織された部隊であるのにもかかわらず、奸臣シロッコがジャミトフを裏切ってハマーンと結ぶという、イデオロギーを無視した奇天烈なまでの迷走を始めていた。
※あの秩序紊乱者シロッコが何者で、何を目的に行動していたかについては、諸説あって判然としない。木星船団と木星帝国とを歴史的に結ぶ"木星師団"を率いてアナハイムの新兵器と戦うも敗れ、のっぴきならなくなって地球圏に落ちてきたという説もあれば、ジ・Oなど異色デザインのシロッコ・ナンバーズには後継機タイタニアが存在し、これに女性指導者を乗せ、新時代のシンボルに据えようとしていたとの説もある。が、彼の否定したハマーンと、サラやレコアにどれだけ精神的な貴賤の差があっただろう。どちらも世俗の人間である。おそらくシロッコは、自分の意のままになる女性を身近に置き、それを傀儡に地球圏支配を進めようとしたに違いない。つまり、カガチと手口が同じなのだ。彼ら木星帰りがどうして同じ発想に行き着いたのかは分からないが、おそらく過酷な宇宙空間において、生命の根源である母体への憧憬を大衆が抱いていると見抜き、それを利用するのが支配にやり良いと考えたか、それとも、女性を前面に押し立てることが、苛烈な木星圏で活動するための狩猟民族的な智恵であったのか。真意はわからないが、以降、ガンダムの歴史において"絶対的な"女性指導者は、ディアナ・ソレルまで登場していないし、そのディアナにしても農業の太祖とされる祖先は男性であり、拠って立つのは血統だった。木星人の考える"傀儡女性を立てた院政"が実現していたら、地球圏にどのような結果をもたらしたのか。大いに興味のあるところである。
シロッコは、ティターンズ乗っ取りのため、その主柱たるバスクさえも謀殺。バックボーンである木星船団を率い、ティターンズの実権を握ることに成功する。だが、ティターンズが完全にシロッコのものになったかといえばそうでもなく、ガディ少佐は単独でコロニーレーザー・グリプスIIを巡りアクシズやエゥーゴに抗戦。
しかし、この時ティターンズは既に、大義も天命をも失っていた。
対するエゥーゴは、最後の局面において究極の兵器・コロニーレーザーを占拠。一年戦争のおりギレンが用いたこの神の槌を、ティターンズ艦隊に向けて発射する。
地球の正義を貫かんとしたティターンズは、「ジオン残党殲滅」という結成目的を達することなく壊滅し、歴史から永遠にその名を消した。
しかし、これが怒りに燃えた宇宙移民者たちによる復讐の一撃ではなく、エゥーゴという単なる寄せ集め軍隊の一作戦として実行されたことに、これ以降の連邦の怠惰と、数十億スペースノイドの運命が決まってしまったよう思える。
ティターンズの名は、叛徒として連邦政府要人たちに記憶されることとはなったものの、それが今日のナチスのような忌み名としての扱いを受けることは決してなかった。
なぜならティターンズとは、結局は地球連邦の本音の部分の極端なものに過ぎなかったからだ。「重力に魂を引かれた人々」は、この戦争においても一切反省を強いられなかったのである。
一方、彼らに比してに若干なりとも救いのある官軍エゥーゴも、このとき結成以来の救いようもない大ダメージを負っていた。
連邦左派右派が共倒れになった現在、新たなる地球圏のメインキャストといえば、殆ど無傷に近いまでにその戦力を温存したアクシズ――つまりジオンしかいない。彼らは地球制圧に向け、次なるステージに移ることとなる。
