ガンダムの歴史/第2集〜フランス軍人たちの掃討作戦
ガンダム0083〜前半のストーリー
そんな連邦の杜撰な戦後処理の隙を突いて現れたのが、デラーズ・フリート。宇宙を拠点に活動する、ジオン軍残党である。
彼らの指導者をデラーズ中将といい、旧ジオンではギレン総帥の親衛隊長を勤めた程の男だ。彼らは戦力こそ少数ではあるが士気も練度も高く、また今だアフリカに潜伏する残党軍との連携により、万全の態勢で連邦軍に挑むことができた。
とはいえ、戦力面での不利が否めない彼らは、主に奇襲に重きをおいて活動することになる。
デラーズ・フリートの起こす一連の作戦行動を「星の屑作戦」といい、その遂行にはガトー少佐があたった。彼もまた、前次大戦において活躍したジオンの英雄の一人であり、彼と名を並べるほどのジオン軍パイロットはそう多くない。
デラーズの命を受けたガトーは、まずアフリカ残党軍と行動。そして潜水艦によりオーストラリア潜入を果たす。深い霧の朝の出来事であった。
彼はこのコロニーの落ちた地で、一体何を為そうというのか……。
事件はトリントン基地にて起こった。
ガトーは、核搭載型の新型ガンダムを核弾頭ごと基地から盗み出すと、アフリカの零細ジオン基地・キンバライド経由で宇宙に逃走。これは、"新たな核"という連邦の欺瞞を全宇宙に暴かんと企図しての行動であった。
※一年戦争初期に結ばれた南極条約には、核の使用を禁止ずる項目があった。が、戦時条約に過ぎないこの条約は、ジオン崩壊と共にその役目を終え、連邦の立場としては、新型ガンダムに搭載された核兵器に違法性はない。しかし、デラーズらジオン軍残党の立場としては、連邦とジオンの講和を認めていないため、戦争はいまだ継続中であり、連邦の戦術核は条約違反ということになる(それ故に、ジャブロー核爆発の回の "核は南極条約で禁止されている" というアポリーの認識は、富野作品・アナザー作品最大の齟齬である。サンライズさんとしてもガンダム作品全てを満遍なく売っていかなければならないだろうから、いつの間にか南極条約は戦時条約になってしまった)。この論理矛盾を打ち消すためには、まずダルシアのジオン共和国を"連邦の傀儡"として否定しなければならない。そして彼の命じた武装解除は、正統性のないものと黙殺しなければならない。デラーズフリートを宇宙世紀の小野田さんと見るか、それともただのテロリストと見るかは、視聴者の目線に任されている。
そしてそれを追うは、シナプス大佐率いるアルビオンただ一隻。
連邦側は有力な将軍を前次大戦で失い、辛うじてコーウェン中将がこの事態に対処しただけであり、他の部隊は全くと言ってよいほど機能していなかったのである(一説には、実はこの時点からデラーズ・フリートと連邦軍との間に何らかの密約があったのだとも言われている)。
その混乱のなかワイアット大将は、連邦の威信を懸けてあるイベントを催す。
かつてソロモンと呼ばれ、ドズル中将が壮絶な討ち死にをしたこのコンペイ島。ここで開かれる、連邦宇宙軍の観艦式がそれだ。
連邦自慢の宇宙艦隊、その殆どを集結させるこの式典は、宇宙移民者への恫喝を兼ねていた。
――もっとも、この式典に効果らしい効果などはないことは分かっている。三年前のジオン軍の蜂起は、観艦式の直後のことだったからだ。にも関わらず、ワイアットは強行した。連邦の威厳と強さを、全宇宙に示すことができると信じて。
そして悲劇は起こった。
あのガトーの襲撃である。彼は奪取した新型ガンダムを駆って式典を襲い、そして装備された核バズーカは、ワイアットをめがけ悪魔の光を吐いたのである。
ガンダム0083〜後半のストーリー
多くの連邦の将兵を道連れに、ワイアットは死んだ。連邦は辛うじてガトーに奪われたガンダムを撃破することに成功しているが、そんなもので失われた将兵の命と軍の威信は取り戻せはしない。地獄の業火より逃れたヘボン少将は、残存艦隊を率いてデラーズ艦隊を追う。ジオンの暴挙や赦すまじ!!
時同じくして、旧ジオンのシーマ中佐(デラーズフリートに馳せ参じた女性指揮官)は、無人のコロニーをジャック。デラーズの支援がため、月へのコロニー落しを目論む。
デラーズ・フリートの次なる狙いは月か?!
しかし、彼女のコロニー落しはカムフラージュに過ぎなかった。アナハイム社との裏取引により月で推力を得たそれは、矛先を一転。地球へとその落下コースを変えたのである。
果たしてコンペイ島以来コロニーを追い続けていたヘボンの艦隊はみな推進剤を切らし、デラーズ艦隊を目前にして足止めをくらう羽目に陥っていた。
そして、そのときコロニーを破壊できる地点に居たのはなんと、連邦軍のどの艦隊とも行動を異にするアルビオン一隻のみ。
後方のコーウェン中将はここに到り、シナプス大佐に秘蔵の新型ガンダムを与えた。
彼はアルビオン以下全ての戦力をぶつけてコロニーの破壊に乗り出すも、たった一隻の艦と一機の新型機だけでコロニーをどうにかできる筈もなく、結局は失敗に終わる。既に、コロニーの地球落下まで残り三時間を切っていた。
しかし連邦軍には奥の手があった。
――というよりも、シナプス大佐の行動は初めから無意義なことだったのである。
今回の騒乱の影の主役たるバスク大佐は、前次大戦において用いられた兵器ソーラ・システムを持ち出し、水際でのコロニー破壊に乗り出した。そして、それに呼応してシーマもその牙を剥く。彼女は、従っていたデラーズを裏切り、彼を人質としたのだ。連邦に尻尾を振ることで、戦後の足掛かりを得んがために。
バスクとシーマは組んでいた!!
しかし、一時は戦局を決するかに見えた彼女の策も、先の失敗を挽回すべく奮戦するアルビオンの活躍により失敗。激昂したシーマがデラーズを射殺したことで、その野望もまた水泡に帰した。野望の一角が崩れ去り、その上ガトーの必死の反抗によってソーラ・システムまでも壊滅。
コロニーは、原型を保ったまま地球へと吸い込まれていくことに――。
ジオンの残光は、ここで遮られた。
それら地球軌道上に展開するソーラ・システム群を打ち破ったガトーの背後からは、新たなる敵が迫っていた。補給を受け、更にコロニーを追って月を発したヘボンの艦隊がそれである。
前方にはバスク、後方にはヘボン。
挟み打ちに遭った彼らデラーズ軍は、共闘組織アクシズより支援に訪れたハスラー提督率いる部隊を頼って戦線離脱を計るも、ガトーを含めその多くは特攻同然の戦いの末に撃破される。
三年前に散った同朋たちの名誉を守るべく立ち上がった男たちの、美しくも哀しい幕引きであった……。
※デラーズフリートが、南米ジャブローの連邦軍本部ではなく、北米の穀倉地帯を敢えて狙ってコロニーを落とした理由は、よく分かっていない(後のZガンダムとの間にストーリー矛盾を生じさせないためが第一義であろうが)。しかし一説によれば、かつて一年戦争時と状況が異なり、連邦以下一強皆弱の体制が確立した後となっては、連邦の基地を叩いたところで、連邦はあっという間に立ち直る。連邦に一時的な出血を強いるよりは、穀倉地帯を壊滅させることで、地球上に食糧難と飢餓を現出させ、地球市民の手で連邦支配を崩そうと考えたのではないかといわれている。いつの時代も、革命の背後には食糧難がある。デラーズフリートは、地球上に未来の革命家を育てんが為、あのコロニーを落としたのであろう。
今回の紛争は、広く一般に連邦の無能をさらけ出してしまった。
だがこの動揺の裏には、ワイアットやコリニー提督をはじめとした連邦高官と、デラーズ・フリートのシーマ中佐との内通があったがためだとも言われている。
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戦後、この軟弱にして日和見主義的な体制を批判したバスクは、ジャミトフ准将と共に「再び来るであろうジオンの残党」に対処すべく、ティターンズを結成。初代総帥にはコリニー提督が、バスクはその実戦指揮を執ることとなった。
この後に宇宙移民者を震撼させることになる「ティターンズ」という組織は、その結成からして既に連邦の常を逸した、反動に満ち満ちたものだったのである。
