機動戦士ガンダムF91
コスモバビロニア建国戦争
元来のガンダム枠から飛び出した、富野監督初めての作品。時代的にも逆シャアから40年のウエイトがおかれ、正しく「仕切りなおし」である(ハサウェイからもアフランシ・シャアからも脱却した作品であるが故に、F90で登場したサナリィのジョブ・ジョンはいささか蛇足の感がある)。キャラクターの上でも「映画であること」の以上に改革が試みられ、主人公の親子関係は緩やかに、敵キャラクターはストレートながらも小奇麗な悪役が多くを占めていた。大河原氏の手掛けたMSに関しても同様、一切のゴテゴテを排することで見事初代へのルネサンスを果たしている。ところで初の外史作品のストーリーだが、これはマイッツァーの唱えたコスモ貴族主義を拠り所に、クロスボーン・バンガード軍が立ち上がるというもの。対する連邦の軍部は彼らを甘く観て(というよりも黙認)しているため、実働部隊にはさしたる戦力が与えられていなかった。その僅かな戦力、即ちF91をして練習艦スペースアークの見習い軍人たちはCV軍に挑む。避難民たちの手を借りながら……。
地球連邦(レジスタンス連合軍)
フロンティア・サイドに駐留していた訓練生と、フロンティアIのレジスタンスの連合軍。たった一隻の練習艦と、地元のサナリィのラボから調達した一機のガンダムでCV軍に立ち向かう。
クロスボーン・バンガード
サイド4に発生。マイッツァーのコスモ貴族主義の下、コスモバビロニア建国のために設立された私設軍隊。鉄仮面を指揮官とし、高い実力と規律、そして優れたMS群を持つ。0123、フロンティアIVの襲撃をして決起するも、レジスタンス組織の手によって半月のうちに壊滅させられた。鉄仮面もこの戦いで死亡している。
シーブック・アノー(キンケドゥ・ナウ)
フロンティア総合学園機械科に在籍中の青年。富野ガンダムとしては異例のマジメなキャラクターで、シーブックの由来は直訳「見本」らしい。学祭途中での突然のフロンティアIV空襲、あまり親しいとはいえない仲のセシリーと、難民となった子供たちを守ってコロニーを抜け出した。その後はスペース・アークに収容され、何の因果か母の設計したF91を操るようになる。以来セシリーとの仲も急激に深まり、鉄仮面を倒した後は「命の鼓動」だけを頼りに彼女を宇宙の深淵から救い出した。その後二人は木星圏へと消え、木星帝国と戦うためにキンケドゥ・ナウを名乗る。改名の理由をドビアは、「セシリーが演じるベラロナに合わせるための役名」と推理していた。トビアやかつての敵と共にドゥガチと戦い、そしてベラロナを迎える。
「なんとォーッ!!」
リィズ・アノー
母と会えぬ寂しさを微塵も見せない、気丈にして優しく生きるシーブックの妹。F91起動のパスワードが「あやとり」であることを発見、もし彼女がいなかったら、劇中のガンダムの戦闘シーンがラスト30分程度になってしまっていた(もしくはさっさとスペースアークが沈んで、現行のヤツよりもどうしようもない作品になってしまっていた)だろう。彼女の役割はとてつもなく大きい……。それにしても父の遺体を目にしての「こんなことになってしまって」ってアンタなぁ。読まされとんねや。その後は一家揃ってコロニーを脱出、生き延びた。
モニカ・アノー博士
家庭のことも顧みず、サナリィでバイオ・コンピューターの研究を続けているというシーブックの母。もう何ヶ月もお家に帰っていないらしい。他のスタッフが月に避難するなか彼女だけはコロニーに残り、家族をあのヨロヨロバイクで探していた。自らの研究に命を賭けていたが、F91に息子が乗っていることを知ると「そんなことのために作ったのではない」と嘆いた。しかしナントに「他人が乗るのならいいのか」と詰め寄られ言葉を失ってしまう。母親として、これは哀れとしか言いようがない。機体の起動パスワードに、娘との思い出・あやとりを使ったのは可愛いらしくもあるが、ヒルダやミューラ同様、勝手な母親ということに変わりはないだろう。その他、宇宙でセシリーを探すシーブックに重要な助言をした。
ビルギット・ピリヨ
スペースアークで戦うヘビーガンのパイロット。ソバカス顔の士官だ。連邦出身でレジスタンスに参加、軍の高官を快く思っていない一人で、その口から発せられる言葉は、歴代シリーズの先輩系パイロットとは異なりプライドばかり高く幾分子供染みた印象を受ける。カイにも匹敵する皮肉屋だが、彼と同じように根は優しいらしい。後にバグの挟み打ちに遭い、機体ごと海の藻屑と化している。
レアリー・エドベリ中尉
赤毛で額の広いスペースアークの艦長代理。士官候補生として乗艦、尉官のクセに艦長代理、実はちょっと前まで准尉だったらしい。故にとても柔軟、軍官らしからぬ話の分かる女性で、アンナマリーにベラロナと二人もの離反者を抱え込みつつも、彼女らを実戦にまで出している。そんな気のいい彼女に、クルーたちもよく従っていた。実はF91にガンダムの名をとらせたのも彼女であり、シーブックたちに未来を託すという意図があったようだ。最後まで艦を沈めることなく抗戦、難民たちを月へ運ぶ。
コズモ・エーゲス元大佐
フロンティアIでCV軍に対し抵抗活動を続ける私設軍隊の長。地元の抵抗派を糾合、スペースアークを中心に戦力を集結するが、暴力・暴言が過ぎるため人望はゼロ。それなりに志ある男なのだろうがアダ名はコズミックで、その実態はガンダム界のジャイアンである。元大佐という身分を利用して威張り散らすが、バグの餌食となりあえなく死亡、ザマアネエよ。子供たちにMSを操縦してみせろなど、ブライト以外の人が言ったとしたらソイツは狂ってる。あの優等生のシーブックをして「ジジイが!」と言わしめた人物。つうか、誰かと思えばマテライトさんじゃないですか。
ベラ・ロナ(セシリー・フェアチャイルド)
コスモバビロニアの偶像。ただの一市民の娘として、フロンティアIVのパン屋で生活を送っていたが、父がなんとCVの密偵で、その根回しによって兄・ドレルのもとへ渡る。フロンティアIにおいては祖父に従い、コスモ・バビロニアのイメージ・キャラクターとなることを認めた。しかし部下・ザビーネに引かれて出撃、戦場で学友・シーブックと再会すると、結果としてCV軍を裏切ることに。その後は彼と共に父・鉄仮面と戦い撃破、宇宙を彷徨うことになるが、シーブックの手で無事助け出された。戦後は貴族主義を否定する演説を敢行、マザー・バンガードでの航行中に事故死したことになっているが、実は同艦の艦長として木星帝国との戦いを繰り広げていた。彼女の半生を見れば、彼女がテテニスを守る理由も理解できよう。戦後はキンケドゥことシーブックと地球に残ったという。
鉄仮面(カロッゾ・ロナ)
クロスボーン・バンガードの総司令官。マイッツァーの養子となり、ナディアと結婚した男。元々「色が白くて食の細そうな研究員」で、出はビケンソン家と決して悪くないが、ロナ家には及ばなかった。バイオ・コンピューターの研究を先行しており、それを生かしてロナ家での発言権を増してゆく。しかしナディアを失ったことでCVの蜂起が失敗を許されない状況となり、自らの「エゴ」を増幅させることで非情になろうと画策。鉄の仮面を被っているのはそれゆえのことで、肉体強化の末に宇宙を歩き、鉄をひしゃげ、脳波でMAを操る化け物にまで達した。しかしその結果起こされた新兵器バグを使った市民の虐殺、ラフレシア・プロジェクトなどはいずれも人々の反感をかい、結果的にCVのコスモバビロニア建国運動は失敗することに。私生活では妻に逃げられ娘に嫌われ、一国一城の主たるものがこれでいいワケがない。一万年後のロランの弁「自分の顔も人前に示せない男が理想を語り、戦争を正当化する?」という違和感も、当時の人々の熱狂の前には理解できなかったようである。
ドレル・ロナ
どこぞの母とカロッゾのもとに生まれ、セシリーとは異母兄弟にあたる青年。マイッツァーによって貴族主義を叩き込まれてきたエリート軍人だが、緒戦において妹を回収して以来功を焦って作戦を無視、そのまま突っ込む若さを持っていた。ザビーネに対するライバル心は強く、共にCV軍の飛車角として、ベルガタイプで戦場を暴れ廻っている。ザビーネがシーブックのライバルとして認められる反面、彼のほうはどことなくガルマさん。さして人気のないあたりに、金持ちボンボンキャラの限界が感じられる。余談ながら、彼の指揮する部隊は「レッド・バンガード隊」というらしい。
ザビーネ・シャル大尉
CVの最強部隊・ブラック・バンガードの指揮官で、急進派の貴族主義者。優れたパイロットセンスを持つことでロナ家からの信頼も厚いが、「成り上がり者」として下からの反発も強かった。眼帯のイメージ通りクールで非情な性格だが人の道を外れたことはしない潔さがあり、「戦いさえ終わればたとえ敵の難民船でも見逃す」という見事な騎士道精神も持ち併せていた。その後はベラに従い木星圏へと渡り、海賊として木星帝国に挑むも突如としてベラを裏切り、艦を餌に木星帝国入り。その際に敵から受けた拷問がもとで精神崩壊、狂ったセリフでキンケドゥを追い続けることに。元より貴族主義の崇拝者であった彼は、より優れた者を自らの頭上に頂きたかったのであろう。ドゥガチがそれに適う人間かどうかはさて置いて。
マイッツァー・ロナ総帥
シャルンホルストの遺志を継ぎ、ロナ家の家長としてサイド4で貴族主義を実践した老人。息子・ハウゼリーを連邦政府に送り込み内部改革を試みるも失敗。娘・ナディアの婿であるカロッゾを使ってCV軍を組織させた。諸悪の根源のようにいわれるが、物腰は柔らかくおおらかで、ちょっと面長な気もするが、白い頭髪はまさに貴族のような風貌。コスモ貴族主義を提唱、地球圏の変革を望んでコスモ・バビロニアを建国するも、軍部はカロッゾにより握られている。戦後はベラの離反により言の意義を失ったものの、彼らのジオン軍とは異なる連邦政府に対してのアピールは、20年を経て宇宙戦国時代到来の大きな足掛かりとなった。
