アベニールをさがして
スターバスタープロジェクト
この作品を「ガンダム」と呼んでいいのだろうか、果たして解らない。富野監督が95年に書き下ろしたソノラマ文庫の作品であり、巨大ロボットの名は「テンダーギア」。モビルスーツの名はどこにも出てこない。しかし今やガンダムの代名詞ともなった「ミノフスキー粒子」の単語はシッカリと出てくる不思議、その上「アナハイム」や「フォン・ブラウン」の名も見られる。新品でまだあるのか確認はしていないが、古本ではもう余り見掛けない。ちなみに肝心のストーリーの舞台は21世紀、軍国主義者たちが組織した自衛隊の後身組織・サージェイ(SAVE-JAPAN)が支配する日本である。それを遥か宇宙から観た「アベニール」という人物は、日本の軍国化を懸念してベストン・クーリガという遣いを差し向けた。日本の技術を越えた、強力な戦闘兵器と共に……。
日向オノレ
妙に生活感を感じさせない高校生。両親は共働きにして母は義理、授業の鬱陶しさから学校をサボるような青年であるのにも関わらず、英語はやたら堪能で、好奇心だけで空襲を見物するような勇気も持ち合わせている。そこをカレッカ隊に襲われ宇宙に上がるが、それからの彼といえば女性ばかり翻弄され、アラフマーンに乗ったときでさえ殺人を躊躇い、表紙絵にあるようなキレは全く見受けられなかった。ちなみに彼は生きて真なる「アベニール」を観た唯一の人物であり、それは祈女やダンサーにも果たせなかった真理との接触であろう。
フール・ケア
「ピアスに始まりピアスに終わった」アウトサイダー。全身に革の衣服をまとい、バサバサの金髪で登場。インティパ効果に惑わされ、ベストンの射殺までやってのけた。その後は捕虜のカレッカと対立しながら宇宙を駆け抜け、いつしか笛吹とすら良い仲に。そしてその不気味な魅力でオノレを惑わせながらもアベニールに目覚め、笛吹と共にコンラッドを拘束、オノレによって三人まとめて消し去られた。タダの素人に過ぎない彼女がテンダーギアを動かせたのも、彼女にライダーの経験があったからであり、その愛車はハーレー・ダビットソン。
笛吹慧中尉
ダイサンカのテンダーギア部隊を指揮するパイロット。本作品の準主人公ともいうべき存在。高卒後はサージェイに入隊、防衛大学に入り直して見事ダイサンカに配属された。右寄りな思想の持ち主で、今まで散々ネコを被っていたためその反動は大きく、ベストン襲撃以前からテロ鎮圧においては問題行動を連発。同期の中には佐官にまで達している者もいるというのに、彼はといえば始末書の連続であった。宇宙に上がってからも問題行動は多く、しかし何よりの問題行動はフールケアとカレッカ、二人の変人女に惑わされたことか。ただひたすらクールで他人事には無関心、ただひたすらに暴れ続けたが、最後はオノレのために散った。永遠のライバル、コンラッドと共に。
ソン・ケージ准尉
ダイサンカに所属するパイロット。浜松での訓練を終え、入間に配属された。隊長の笛吹とは対照に物分りの良い男で、「自分たちの活躍は無いに越したことはない」と語っている。しかしその根底はサージェイストであり、参謀本部からの命令は受けても内閣からの命令は蹴るとさえ話していた。その後はショウカクにて宇宙に上がり、コロニーカルカッタの宙域でコンラッド部隊と交戦、死亡する。
冷泉キョーコ准尉
ダイサンカに所属する女性パイロット。浜松での訓練を終え、入間に配属された。民間人に対しても恫喝的な態度で臨む。真面目一本槍の性格ではあるが、一度気を許すと180度変わる。その後はショウカクにて宇宙に上がり、コロニーカルカッタの宙域でコンラッド部隊と交戦。ソンの戦死に動揺し、その直後フールケアの援護も空しく死亡する。
アベニール教祖
コスモ・クルツの教祖。ヨーロッパのいちキリスト教徒に過ぎなかったが、スターバスタープロジェクトに参加して神託を受けることに。オチから言ってしまうと、結局アベニールとは宇宙意思のような抽象的な存在のことであり、彼女やダンサーのような俗的なアベニールは「真なるアベニール」とは遠くかけ離れた存在である。故に勘のよいオノレは彼女のことを「新興宗教の教祖と同じだ」と感じるのだが、コンラッドだけは彼女を政治的に利用しようと目論んでおり、あのマリアとカガチのような醜い関係がこんなところでも生まれてしまうのである。
ゲイス・カレッカ少尉
コンラッド部隊に所属するエースパイロット。鋭利な感性をもつ黒い短髪の女性で、コンラッドからはガスコン大尉以上の信頼を受けている。ベストンを追って東京に降下、しかし笛吹と取っ組み合いの末、キャロルにて捕虜となった。その頃にはその激しい気性も収まり、笛吹とは「寝てもいい」と思うほどに心を許し、フールケアとも和解。しかしショウカクに捕らわれてからは完全な捕虜として扱われることに。そして一瞬の隙を突きコンラッド部隊に帰還、リック・メッケードを駆ってオノレと戦うも敗北、戦死した。
コンラッド・ヘイヤーガン大佐
ネフポとネオ・フリーメーソンに隠れてインスパイアー・エンジンの開発を進める、コンラッド部隊の指揮官。退役軍人ながらも縦横無尽に暴れられる彼の正体は、「最も純粋な間違い方」で世界を導こうとした一介の思想家であった。その裏に控える組織も彼の野心に勘付いていたが、後々国連に対しての口実に使おうとして「仮想敵」のまま放ったらかしになっていたらしい。体力・経験・精神力のいずれにおいても高い能力を有し、試作機ながらも完成機に乗る笛吹を撃退。しかしジェントルマンたちの言に動揺したのか、やたらアベニールに固執するようになり、笛吹とフールケア共々オノレによって撃破された。
「地獄に行けぇ!」
アンジュ
梶少尉たちがつけた、防空システムのコンピューターへの愛称。
アンソニー
コンラッド部隊に所属するパイロット。アラフマーンと交戦、撃破される。カレッカはインティパ効果で彼らの死を悟っていた。
伊上軍医
ショウカクに乗船する軍医。コンラッドとの戦いで倒れた笛吹を手当てした。その後はアケモと共に捕虜の監視役となるが、彼女が見せた一瞬の隙によりカレッカが逃亡。その際、彼は腹部を拳銃で撃たれ、重症を負う。その看護には、当のアケモが携わっていた。
ウリイヘム
ガスコン部隊に所属、ショウカクに挑んだカウンタッチ改のパイロット。アラフマーンの手にかかり戦死、ガスコンはインティパ効果によりそのことを悟る。
ウイルソン少佐
司令部勤務の士官。サージェイのオシリス占拠の際、ヨーゼフ大尉が連絡を取っていた。
海老原軍曹
ベストン襲撃に際し、本部ビルの有線回線が使えるかどうか確認に遣わされた下士官。
エリザベス
コンラッド部隊に所属するパイロット。アラフマーンと交戦、撃破される。カレッカはインティパ効果で彼らの死を悟っていた。
梶少尉
東京の地下シェルターはレーダー・センターに勤務する士官。防空システムに「アンジュ」という愛称を付けていた。突然のベストン襲撃に慌てる幹部たちに反して、極めて冷静に事に当たりつつも、彼の演説には驚きを隠せなかったようである。とにかく何かと苛立っている青年。
可信技術大佐
主を失ったアラフマーンを、技研の権限で調査に訪れた技術士官。新型機の研究のため近所に居たらしく、どうしてもとダダをこねて連れてこられたらしい。そんな彼を笛吹は「マメなこった」と笑っていた。こんな小型兵器にインスパイアー・エンジンが搭載されていることに、驚きを隠し切れずにいる。その後はショウカクにも同乗、フロント3に長居をする彼に、槌田艦長は苛立ちを感じていた。
ガスコン・オデイロ大尉
コンラッド部隊に所属、彼から最も厚い信頼を得たパイロット。端正な表情をもち、顔そのままに感性も鋭利。それ故コンラッドからはリック・メッケードへの搭乗を禁ぜられていた。コンラッドに心酔し、彼の秘策通りにズィクルよりカウンタッチ改で出撃。連携作戦を駆使してアラフマーンに迫るも、その大半は撃破されてしまった。
車田曹長
ベストン襲撃に際し、本部ビルの有線回線が使えるかどうか確認に遣わされた下士官。
クラック
フロント3のスタッフ。スターバスタープロジェクトに参加、世界に計画の必要性を説くべく、CGによる合成映像を作成していた。長髪の青年で、アケモよりその紹介がある。カプリコンが仕事という、暇な(?)人たちである。
グレゴリー
コンラッド部隊に所属するパイロット。アラフマーンと交戦、撃破される。カレッカはインティパ効果で彼らの死を悟っていた。実はカレッカの恋人であり、彼女は出撃前に彼と寝る約束をしていたという。閃光に消える直前の「チッ!」という舌打ちを、彼女は感じていた。
ゲハルト・プランシー
コスモ・クルツの修道士にして、アベニールに近習する青年。フロント1に入港したショウカク一行を迎えた。教義に忠実で禁欲的、フロント1に訪れる者の目的が娯楽施設にあることを苦痛に思っている。またアベニールにも忠誠を誓い、彼女を害する者は誰であれ許さない。ツツとは反対に直ぐカッとなる、宗教家にはあるまじき人物であろう。
ケビン・コストナー大尉
コスモ・クルツの支配するステーション、フロント1に駐留する兵士。ネフポの名においてショウカクを指揮下に置くと宣するが、ヨーゼフ大尉によって丸め込まれてしまう。どうやらコンラッド部隊の士官だったようだ。
近枝上等兵
レーダー・センターに勤務する下士官。梶の部下であり、彼と共にベストン襲撃の映像に見入っていた。画面に映り込む彼女の喉首の線を、梶はいいものだと思う。
槌田中佐
ショウカクの艦長。宇宙におけるサージェイの最高責任者にして、その座に相応しい的確な判断力を持った士官。軍人というよりも政治家タイプで、本部の意見を仰がずしてプロト・フロンティア臨検やオシリス制圧など、戦略的な作戦までも発動したりする。普段は学者肌を思わせるイギリス風の英語を喋っていた。コンラッドがブリッジに加えた一撃により死亡。
ジェントルマン(仮)
ネオ・フリーメーソンの構成員。ショウカク拿捕の承認を取り付けるため、コンラッドはディリーにて彼らと接触。激昂したコンラッドにより銃殺された。他にも同じ名の実務者は数限りなくおり、コンラッド撃破後のオノレを助けたのも彼らである。「統合されたものの一員」であるということから、固有名詞は持たず、理想のネオ・フリーメーソンリーとは「人類が地球に対して贖罪するには自滅しかない」と考えている人間のことらしい。
スェッソン・バスーン少尉
キャロルの副操縦士。オノレたちを尋問、彼とサージェイとの関係を疑った。日本に対しても偏見が多いようで、コピーを得意とするサージェイを笑っている。
ツツ・ソーゼン
コスモ・クルツの修道士にして、アベニールに近習する青年。フロント1に入港したショウカク一行を迎えた。日系人で、オノレに門前町や売笑窟についての説明をしている。
ビックス・アケモ
シャトル・キャロルに搭乗する、米系の少女。幼いながらもクルーの一人として雑務をこなし、オノレのパートナーとして活躍した。しかしその純粋さ故に思春期のオノレとの価値観の違いは大きく、真の意味でのパートナーにはなれなかった。性格はピュアにして騙されやすい、シッカリ者のふりをして案外ヌケている。ちなみにコンラッド撃破後の行方については不明、もしかしたらオノレとプロト・フロンティアに残ったのかも知れない。
ブッシェル・カッハ博士
フロント3の責任者。白人と中東人のハーフのような肌と、長身で屈強そうな体格をもつ中年男性。笛吹たちに自ら手掛けるスターバスタープロジェクトについて説明をするが、その裏で行われている真実を彼は知らない。組織の悪意を感じた彼は進んでサージェイに協力した。コンラッドとの戦いに際し、ノーマルスーツを傷つけられ窒息死。学も深く、日本語も堪能だった。
プテット・アベニール
祈女のアベニールと同じ能力を持った、カルカッタコロニーのストリッパー。北欧系の血をひく、魅力的な体つきの少女である。その存在を感じたオノレ一行はガバスガバスにて彼女と接触、以来行動を共にする。祈女のアベニールが精神面の癒しをおこなうなら、彼女は肉体面での癒しを生業としている。風俗嬢だが芸伎のような慎ましさを持っていた。
ブランハナ艦長
オシリスの艦長。サージェイによって艦を占拠され、捕虜となる。しかし槌田は彼の反応があまりに冷静なのに疑問を持ち、彼がネオ・フリーメーソンの重役であると睨み、国連の査問会に掛けることを決意していた。かつてはどこぞの国の軍人だったらしい。
ベストン・クーリガ大尉
コンラッド部隊に所属、新型アラフマーンを任されるほどのパイロットだったが、インティパ効果に突き動かされ日本へと降下。流暢な日本語でサージェイの非を暴く演説をぶった。死と生の狭間で「アベニール」を観た世界で最初の人物であるが、それが俗人には「乱心」としか映らなかったようである。その直後、彼はフールケアの手に掛かり死亡。その死に顔は、幸せこの上ないものであったという。ちなみに、あやめた彼女のほうですら、インティパ効果により惑わされた一人であった。
前嶋大尉
槌田艦長の副官的存在。作戦士官でありながらインティパ効果にも通じ、しかもアメリカ留学の経験から口にする英語も正確。役職に相応しく冷静な性格で、プロト・フロンティアに対しても驚きより好奇心が先に立っていた。次第にヨーゼフ大尉にその役どころを奪われるようになる。コンラッドがブリッジに加えた一撃により死亡。
マンデ・ルブロー曹長
キャロルのメカニックマン。アナハイム・エレクトロニクス社から出向している。
マンドーキ中尉
ディリーコロニーに駐留する兵士。ガバスガバスより逃亡するオノレ一行と遭遇するも、ヨーゼフ大尉の機転により素通り、あろうことか逆に捕虜にされてしまった。
岬中尉
東京部隊からショウカクに参加したテンダーギアのパイロット。笛吹の二年後輩にあたる。数々の修羅場を潜り抜けた笛吹からは甘く観られており、故に彼にはライバル心を抱いていた。コンラッド部隊と交戦、死亡する。
ミッチャー
ガスコン部隊に所属、ショウカクに挑んだカウンタッチ改のパイロット。アラフマーンの手にかかり戦死、ガスコンはインティパ効果によりそのことを悟る。
本宮流井子曹長
レーダー・センターに勤務する下士官。梶の部下であり、非常時に彼の前でシャバの言葉遣いをしたことの顰蹙をかっていた。彼と共にベストン襲撃の映像に見入り、たった一人「アベニール」の固有名詞に疑問を抱く。
ヨーゼフ・ペランダ大尉
フロント3に駐留する士官で、フォン・ブラウン・ビレッジ司令部の直属。ブッシェルと仲がよく、彼とは天体観測友達。近代的な大儀のない戦争理論を笑い、それをインティパ効果で解決できないかと夢想していた。ネオ・フリーメーソンの悪意を憎み、比較的笛吹には友好的。プロト・フロンティアの存在を知るに至り、完全に槌田のサポート役となった。
ルボン
ガスコン部隊に所属、ショウカクに挑んだカウンタッチ改のパイロット。アラフマーンの手にかかり戦死、ガスコンはインティパ効果によりそのことを悟る。
レィディ(仮)
ネオ・フリーメーソンの構成員。ショウカク拿捕の承認を取り付けるため、コンラッドはディリーにて彼らと接触。激昂したコンラッドにより銃殺された。他にも同じ名の実務者は数限りなくおり、コンラッド撃破後のオノレを助けたのも彼らである。どこか左掛かっている上に、自虐的なほどストイックな存在。
